美しい純白のポーセリンダイヤルに、トレンチウォッチを思わせる大ぶりなアラビア数字とコブラハンドを合わせたミリタリーデザインの文字盤。軍用時計を踏襲していながらそこはかとなく気品を感じさせるのは、〈パテック・フィリップ〉の名作Ref.565と全く同じ、ラグからベゼルにかけてシームレスな流線型を描く〈フランソワ・ボーゲル〉社製のウォッチケースによるものか。 イギリス南西部の人口3万人に満たない小さな町、ニュートン・アボット。初期中世から続く古い市場で知られ、ダッフルコートブランド〈インバーティア〉発祥の地であったり、地元で採れる良質な土が陶磁器の名門〈ウェッジウッド〉の原材料ということ以外、観光地でもなければ大都市でもない、そんな町にかつて存在した〈ハクスタブル〉というジュエラーが1930年代に販売用に作ったのがこちら。 片田舎のジュエラー、と言っては失礼ですが、ほぼ無名の存在であったにも関わらず、フランソワ・ボーゲル製の雲上ブランドと同じケースを使用することができたという今ではありえないマッチングが、このような知られざる傑作を生み出す背景であったことは言うまでもありませんが、それにしても美しい腕時計です。 搭載するムーブメントは、実力派のマニュファクチュールとしても名を馳せるビューレンのオリジナル機、CAL.10.5H4.8。ショックレジストを装備した耐震機能付きで、流線型のブリッジが美しいビューレンの古い時代の代表機のひとつ。 着用するベルトは〈アノニム(anonym)〉のブリティッシュグリーン。英国で1860年創業という長い歴史を持つタンナー〈J.ベイカー〉社のブライドルレザーを使用しています。同社のブライドルレザーはオークバーグの皮から抽出するタンニンエキスを用い、1枚の皮に1年半という非常に長い時間をかけるという、2000年前と変わらない製法にこだわるユニークな存在で、重厚かつしなやか、それでいてモチモチとした質感が病みつきになります。
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