現在も英国で高い人気を誇る高級宝飾品店〈アスプレイ〉。ジュエリーや貴金属、腕時計やレザーハンドバッグといったハイセンスなラグジュアリーアイテムの英国王室御用達で知られる同ブランドが、1956年に英国唯一の国産腕時計メーカー〈スミス〉に製造を依頼した別注アイテムがこちら。

バーインデックスを用いたシンプルでドレッシーな文字盤に、太めのドーフィヌ針を合わせた気品溢れるデザインは、アスプレイのブランドイメージにマッチするラグジュアリーなセッティング。センターセコンドの秒針の先端にレッドアローが備えられたスミスのアイコニックなディテールも踏襲されていて、シンプリシティの中にチャーミングな一面を覗かせるスミスならではの一本。

9金無垢のラウンドケースは、”SMITHS CLOCKS & WATCHES"（SCW）、つまりスミスが自社で製造した英国製。やや大振りなのもこのモデルの特徴で、優雅にして力強いラグデザインに加え、ノンポリッシュでエッジがしっかりと立ち上がったマッシブなフォルムや質感がコンディションの良さを物語ります。

ムーブメントはCAL.1215のセンターセコンドモデル、"27.CS.”を搭載。キャリバーナンバーは「27cm、センターセコンド（Center Second）」を意味しています。1215同様、優美な流線形のレイアウトや独特の粒金仕上げが美しいムーブメントですが、厚みがあり頑丈なパーツで構成される質実剛健な作りも見逃せません。

ちなみに裏蓋に見られるプレゼンテーションのエングレーヴィングは、第二次世界大戦で「ボーファイター」や「ハリファックス」といった戦闘機を製造していたことで知られる英国の航空機メーカー、フェアリー・アヴィエーションの社員が1957年に定年退職した際の記念品として贈呈されたことが記載されています。

着用するベルトは〈アノニム（anonym）〉のブリティッシュグリーン。英国で1860年創業という長い歴史を持つタンナー〈J.ベイカー〉社のブライドルレザーを使用しています。同社のブライドルレザーはオークバーグの皮から抽出するタンニンエキスを用い、1枚の皮に1年半という非常に長い時間をかけるという、2000年前と変わらない製法にこだわるユニークな存在で、重厚かつしなやか、それでいてモチモチとした質感が病みつきになります。