英国で初めて純国産の腕時計ムーブメントを開発・量産に成功した〈スミス〉。1947年に腕時計の販売を開始し、1952年にベストセラーモデルとなる「デラックス」を発表。エドモンド・ヒラリー卿のエベレスト登頂の際にも同社の腕時計が採用されたことも拍車をかけ、スミス・ブランドは確固たる地位を得ることになります。

しかし、名機「デラックス」が生まれる以前、わずか5年の間にしか製造されなかったモデルも存在しています。上品ながらプリミティブなデザイン性を持つ「プレ・デラックス」と呼ばれる初期モデルがそれです。今回ご紹介する個体は、その中でも最初期の1946年頃に製造されたもので、スミスの時計製造の歴史においても重要な存在意義を持つレアピースです。

印象的なローマンインデックスの文字盤。スミスの腕時計でローマ数字が採用されたモデルは非常にまれで、代表的なものはスミスが手掛けたJ.W.ベンソン名義の腕時計となりますが、それらのベーシスとなったのが1940年代末に製造されたこちらの個体です。ローマ全数字というのもポイントで、このスタイルは後にも先にもこのモデルのみ。繊細にして力強いシリンダーシェイプが存在感を放つ金無垢ケースは、英国のウォッチケース製造の名門〈デニソン〉社製。

搭載される英国製ムーブメントは、スミスが誇る名機CAL.1215。こちらの個体は1947年〜1950年の間混在していたいくつかのバリエーションのひとつで、”SMITHS”のロゴを持ち、パーツの粒金仕上げに移行した最初期の個体となります。

着用するベルトは、当店オリジナルの〈アノニム〉。イタリア・トスカーナ地方の名革《ブッテーロ》を使用しています。深い経年変化も楽しめるほか、腕に馴染みやすくその着用感の良さも魅力的です。
» "anonym" LEATHER BELT (BUTTERO / BROWN)